The Candidate (1972) : 候補者ビル・マッケイ

アメリカの上院議員選を舞台に、選挙のメカニズムに組み込まれ、操り人形と化していく若者の姿を描く。製作はウォルター・コブレンツ、監督はマイケル・リッチー、脚本はジェレミー・ラーナー。

監督:マイケル・リッチー
出演:ロバート・レッドフォード、ピーター・ボイル、ドン・ポーター、アレン・ガーフィールド、カレン・カールソン、クイン・レデガー、モーガン・アプトン、メルヴィン・ダグラス、マイケル・ラーナーなど。

The Candidate (1972) : 候補者ビル・マッケイのあらすじ

カリフォルニア州の上院議員選は、共和党のジャーモン(ドン・ポーター)が現職議員の強みを発揮していたが、民主党は、若くて有能な弁護士ビル・マッケイ(ロバート・レッドフォード)に白羽の矢を立てた。ビルは妻ナンシー(カレン・カールソン)と幸福な生活を送り、加えて父のジョン(メルヴィン・ダグラス)は民主党の長老で、カリフォルニアの州知事をつとめたこともある。党では、ビルの選挙参謀にルーカス(ピーター・ボイル)を選びプロジェクト・チームを編成した。プロデューサー格のクライン(アレン・ガーフィールド)、マスコミ担当のヘンダーソン(モーガン・アプトン)、進行係のジェンキン(クイン・レデガー)、演説作者のコーリス(マイケル・ラーナー)……いずれも選挙にかけては、名うてのプロである。「選挙に勝つために必要なのは、政見ではなく、有権者にどうしたらいい印象を与えるかにつきる」と言うルーカスに、ビルは批判的だった。しかし、南カリフォルニアの山林で山火事が起きて、かけつけたビルとジャーモンが鉢合わせした時、ジャーモンは報道陣に、当地方を災害地区に指定すること、ジャーモン自然保護法案を提出することなどを、誇らしげに宣言した。どんな高邁な理想も、現職議員がちらつかせる公約の前では影が薄いことを、ビルは痛感するのだった。また、父の古い体質がいやで意識的に無関係であろうとしたビルも、父の有形無形の影響力を無視するわけにはいかず、協力を頼むのだった。世論調査の予想得票率は、ジャーモン54パーセント、ビル39パーセント、浮動票7パーセントと発表され、ビルは、この数字なら逆転の可能性があると思った。やがて、ビルは自分と無関係な人格が、第三者の手でつくり出され、一人歩きしはじめたのを感じた。ジャーモンがテレビの公開討論に応じた。プロジェクト・チームの活躍は最高潮に達し、ルーカスはビルの箸のあげおろしにまで口をはさんだ。討論は進んだが、敵もさる者である。ビルはルーカスたちが練りあげた草案を捨てていた。「私たちは口当りのいい言葉で話し合ってきたが、肝心なことを避けて通りました。恐怖と憎悪と暴力によって、私たちの社会が分断されている事実を無視してきたのです……」ジャーモンは不意をつかれて狼狽し、番組は終った。スタジオの控え室では、父のジョンが待っていた。満面に笑みをたたえている彼は、ビルが優位に立ったと見て、重い腰を上げた。ベテラン政治家らしい狡猾さだった。ビルの態度にも微妙な変化があらわれた。ジョンの紹介する選挙ブローカーにも抵抗を示さなかったし、ホテルへ女を連れこんで打合わせの時間に遅れたりした。そして演説会では、アメリカの栄光をたたえ、偉大な社会の一員として自覚を高めよう、と訴えた。やがて、投票日が来て、ビルが勝った。熱狂する支持者の渦を逃れた彼は、ルーカスを事務所の空室に誘うと言った。「これからどうしたらいい?」。彼の顔は、敗者のように不安気だった。

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